平成最後の夏の〆に。

鳥羽市立海の博物館(http://www.umihaku.com)で今月末まで、水彩で水生生物を描く長嶋祐成氏の個展をやっているというので、車に乗り込み、くねくねとうねるパールラインの彼方に出かけた。

氏を知ったきっかけは、家族が取り寄せた長嶋氏の画集『黒潮魚の譜』だった。淡くにじむ筆で、魚体の鮮やかな色、儚い輝きを写し取る絵に魅せられて、本物を見てみたいとずっと思っていたのだ。

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道すがら「焼き牡蠣あります」看板をいくつも見ながら到着した当該博物館は、瓦葺きに黒板張りの海辺の蔵のような(語彙力がない)面白い建物が並んでいて、建築関係の賞も取っているらしい。

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自分が行った日は空いていたけれど、八月中のにぎやかな様子が、置かれていた来館者ノートから読み取れて、微笑ましかった。
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落ち着いてすぐそばから見られて、ほんとうによかった。

自分の周りにも、鯵が開きの状態で海を泳いでいると思っていたひとがリアルにいた。あの頃に、まるごとの魚がどのように調理されるかを丁寧に絵解きした長嶋氏の『きりみ』絵本があればなあ…

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船の収蔵庫(木製の船を保管するために湿気が保たれていて、もわっとしていた)やタコを中心にした企画展を見て回ったあとは、併設のカフェで海女さんの取ったテングサから作られたところてんデザートを。
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帰りの空に、彩雲を見た。

 

博物館では、伊勢神宮で毎朝毎夕用意される神様の食事(日別朝夕大御饌祭)の模型も展示されていた。あれだけの手間をかけた立派な、また清浄な御饌を、毎日二回、千五百年。せんごひゃくねん…にわかには腑に落ちない時間の長さだ。来年からどんな元号になったとしても、あの儀式は続くのだろう。ふだんは、神社にお参りにいったときでさえまるで意識しない、神道祭儀の背骨をちらりと見たような気がした。

 

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