貝は地震の夢を見るのか。

 思い出したのでメモ。

 一昨日の朝八時少し前。

 こちらより早く玄関から出た子供が奇声を発した。靴を履きながら何事かと尋ねると「すごいよ!はやくきてみて!」という。首をのばすと、軒下に置かれた陶製睡蓮鉢(鉢というか深めの壺型)の灰色の肌一面に、白ビーズに似た粒が光っていた。貝殻の大きさ数ミリほどのタニシの子供たちが、水から出て壺の外側にはりついていたのだ。近寄って覗くと小指の先くらいある濃灰色の親たちは水面下にとどまっていた。鉢の正当な住人であるメダカたちにも異変なし。

 タニシの幼稚園児の遠足は、前の晩の激しい雨と関係があるのだろうか。

 しかし、器は雨が降りこまない場所に置いてあるし、降雨の有無に関係なく今までこうした行動を観察した経験はない。タニシの生態には詳しくないのでチェックしてみると、形態・習性からこの貝は雌雄異体のタニシではなく、雌雄同体のサカマキガイらしいと判明。繁殖・呼吸方法も違うようだが、詳細は勤務時間外に調べることにした。モノアラガイとサカマキガイは似ているが貝の巻き方が反対というのを読んで漆原氏の『蟲師』を思い出したり(笑)

 さて、この脱出行が起きた日の晩に、関東地方は五回の地震に見舞われた。はたして軟体動物にも大地の異状感知能力はあるのだろうか。同じ水棲のナマズならば昔からの実績もあるが、貝が暴れる(っていうんだろうか…)のは聞いたことがない。サカマキ一族の単なる習性である可能性も高いとしても子供のみというのが気になる。もうすこし調べてみよう。宿題。