乱鴉の島

乱鴉の島

作者: 有栖川有栖

出版社: 新潮社

発売日: 2006/06/21

犯罪学者の火村助教授が探偵役、作家の有栖川有栖(男性です)がワトソン役をつとめるミステリの最新作。でも火村自身がかかえる例の謎にはまったく触れられていません。有栖川先生はそこらへん書く気は、実はないんじゃなかろうか。

むかし、犯罪学と被害者学は勉強したけれど法医学だけは諸般の事情で受講しなかった。これら三つの講義を制覇すると三冠王と呼ばれたものだが、いったい何の王様だったのか。犯罪つながり三冠王? うれしくない。

いまでこそ、犯罪絡みのアレな画像はネットのあちこちに落っこちているけれど(スナッフもどきまでも、だ)当時はそういう写真を見る機会はとても少なかった。公序良俗に反する刺激が丁寧に、また厳重に一般の目から覆い隠されていた古きよき時代というか。そのため、ふつうでは考えられないような目に遭った被害者を写したスライドが入れ替わるたびに、嫌悪と驚きのどよめきが暗い教室中からあがったものだ。受講者のなかにはエグい写真見たさに受講していた連中も居たらしい。ひとり緊縛プレイ中に心臓麻痺で亡くなって警察が呼ばれて、とかいう悲惨な写真に混じって、今ではすっかり一般的に認知されたと思われる「片付けられないひとたちの部屋」のスライドもあった。当時は、うわあ、ありえないよ! と思ったけど……。今週末こそは部屋かたづけよう(逃)