幽霊を捕まえようとした科学者たち

幽霊を捕まえようとした科学者たち

幽霊を捕まえようとした科学者たち

話は、心霊現象の科学的探求を目的に科学者たちが結成した英国心霊研究会(SPR)の黎明期から始まる。科学者の鑑ともいえる熱意をもって彼らはインチキを暴き、実験と推論を重ねていくのだが、学界と世間は冷たい…。しめくくりは、ミイラ取りがミイラになった実験の顛末を描いている。すなわち、稀少な「本物」の霊媒を介して、死のとばりのむこうに旅立ったSPRの研究者たちを呼び寄せ、霊魂の死後存続の謎を探ったのだ。

少しでも科学的に信頼できないとなれば徹底的に資料を排除したSPRの研究者たちの姿勢は、生きている死んでいるにかかわらず(笑)真摯そのものだ。もっとも優秀かつ懐疑的だった研究者リチャード・ホジソンは、神智学の大物ブラヴァッキー夫人を詐欺師と断じ、もっとも本物に近いと思われたアメリカ人霊媒パイパー夫人に対しても、私情は研究を妨げるとして打ち解けることがなかった。その彼の霊と交流する実験は暗合に満ちていて、夜中に読んでいたこともあってすこし怖くなった。

霊媒の真贋調査に、ナゾーじゃないほうのロンブローゾがかかわったなど、初めて知るエピソードもあって面白い本だった。

英国心霊協会 Society for Psychical Researchはいまも活動している。ホームページ(http://www.spr.ac.uk/)の「Research」の項目より引用する。


The principal areas of study of psychical research concern exchanges between minds, or between minds and the environment, which are not dealt with by current, orthodox science. This is a large area, incorporating such topics as extrasensory perception (telepathy, clairvoyance, precognition and retrocognition), psychokinesis (paranormal effects on physical objects, including poltergeist phenomena), near-death and out-of-the-body experiences, apparitions, hauntings, hypnotic regression and paranormal healing. One of the Society's aims has been to examine the question of whether we survive bodily death, by evaluating the evidence provided by mediumship, apparitions of the dead and reincarnation studies.

ホジソンたちによると、『向こう』からの交信はすごく労力が要るらしい。熱意と使命感を持ち続けた彼らだから、実験も可能になったのだろう。

いずれは誰もが必ず三途の川を渡るのだから、いまここでそんなあやしげなことはありえないとか、いやあるとか、あんまり騒がなくてもいい気がするが、さて。