前半生と後半生のバランスについて

 一年間にわたって本欄では、シリコンバレーやウェブといった私の専門に関わる本だけでなく、教養書をビジネスに役立てる視点から読み解く試みも続けてきた。

 「知を愛し、せっかく生まれてきたからには個の力で何かを成し遂げたいと志は持ちつつも、飯を食うために、世の中と折り合いをつけるために、まずはビジネスの世界に身を投じた」という人たちを、心の中で想定読者に置いていたからである。かくいう私もそんな一人なのだ。だから若い頃は、前半生の事業成功で築いた資産を後半生の発掘調査費に注ぎ込みトロイア遺跡を発見したハインリッヒ・シュリーマンを、「前半生と後半生の役割分担」のロールモデル(お手本)に置いていたほどだった。


読売新聞2008年3月23日(日)朝刊「ビジネス5分道場」

【教訓】事業経験を生の充実に生かせ/梅田望夫 ミューズ・アソシエイツ社長

大したこともしないまま、人生の前半を終わろうとしている。へたをすると後半もこのままだらだらしてしまいそうだ。これから、心血を注ぎたいと思うものが見つけられるだろうか。

次の十年について考えはじめよう。すこしずつ。