ナイチンゲールの沈黙
- 作者: 海堂尊
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2006/10/06
- メディア: 単行本
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完全に速読エンジンがかかってしまった。orz
癌に侵された眼の摘出手術をひかえた小児科患者たちと、かれらの面倒を見る看護師の小夜。ある日、患者の親が無残な遺体となって見つかった。捜査に乗り出す警察。ぼんやり神経内科医の田口も、その渦に巻き込まれていく。
高階病院長は、聴衆ひとりひとりの眼を見つめる。
「私たち医療従事者は今、社会からの厳しい批判の視線にさらされています。時には嫌になることもあるでしょう。だが人々は、いつの時代も医療を必要としています。そして我々にはそれに応える義務がある。間違いを犯さない人間はいません。間違いを犯さない組織もありません。その事実を踏まえた上でひとつだけ守って欲しいこと、それは、間違いは決して隠してはならないということです。間違いを申告し、是正して初めて、喪われた信頼が回復するのです」(p.21)
高階院長に賛成。これを実践するのは簡単なようでいて、とても難しい。
このシリーズはほんとにミステリなんだろうかという疑念はさらに大きくなったが、エンタテイメント小説として面白かったから無問題。くっきりと輪郭付けされたキャラで読ませるという点ではラノベに似ている。文庫落ちしたときにそれらしいイラストの表紙にしたら違和感なく受け入れられそうだ。美少女や美女も出てくるし、田口と白鳥のペアに萌えられれば……ごめんなさいうそですもういいません。
舞台が小児科なので、そっちの医師になった友人から以前聞いた話と描写がだぶった。大人でも考えるだけで身のすくむような試練を背負わされる子供たちのメンタルケアは、実際にはどうやって行われているのだろう。
ひとをひととも思わない態度と口の利き方では白鳥とためをはる警察庁の加納が得意とする捜査技術、デジタル・ムービー・アナリシスについては聞いたことがぜんぜんなかったのですこしとまどった。「事件現場環境をすべてデジタルデータ化し、コンピューター上で種々の解析をかける手法」らしい。海外ドラマ『CSI』シリーズで、よく捜査員たちがPC前に座ってやってるアレだろうか。たとえば部屋に飛び散った血痕や飛沫の方向や形状から、犯人や被害者の行動を克明にシュミレーションすることもできるので、もし現実にある技術ならば便利そうだなあと思っていた。本の中では「これはevidense-based research だ」というような台詞もあって、ついグリッソム主任の顔が浮かんだ。最近ぜんぜんドラマ観る時間がとれてないな。