イリーガル・エイリアン

イリーガル・エイリアン (ハヤカワ文庫SF)

人類は異星人とのファースト・コンタクトを果たした。

ある日、異星人たちが滞在している施設で残虐な殺人事件が起きる。逮捕された容疑者は異星人。前代未聞の裁判の成り行きやいかに。

『CSI』シリーズで取り上げられている地道な鑑識捜査の次の段階、法廷に移ってからの弁護側と検察側のやりとりを堪能できる。被告人はエイリアンだけれど。

地球上では絶対的マイノリティというその立場を考慮して、選任された弁護士もマイノリティの代弁を得意とする黒人弁護士。何かというと引き合いに出されるのは、94年当時大変な話題になった元アメフト選手Ｏ・Ｊ・シンプソン裁判である。この騒動では、リンク先のwikiを見てもらえばわかるが、アメリカに根強く残る人種問題が大きくクローズアップされた。当時は、裁判そっちのけの奇々怪々な法廷人間模様に半ばあきれつつニュースを観たものだ。刑事裁判では無罪、民事では有罪という判例は最近の日本でも少しずつ出てきているようだが、あの異様なスターそろい踏みの法廷ショーは忘れがたいものがある。著者のソウヤー氏もあれを見ながらこの本のネタを考えたのかなと思って検索してみた。

I'm a news junkie, and have a TV in my office. While I was writing my novel Starplex (Ace Books, October 1996; a Hugo and Nebula Award finalist), the Simpson trial was on all day long. As a Canadian, I knew I was looking at it with an outsider's perspective; in Canada, we have a somewhat different judicial system and we don't have megacelebrities like Simpson.

When Ace Books had bought Starplex, they'd also contracted for a sequel to it. But as I was finishing Starplex, I realized there wasn't any room for another story there. Still, that outsider's view of American justice kept tickling at the back of my mind. A title popped into my head one night — Illegal Alien — and the rest immediately fell into place: a courtroom drama with an extraterrestrial defendant. I asked my editor Susan Allison if I could write that instead of the Starplex sequel, and she enthusiastically agreed.

Writing Illegal Alien by Robert J. Sawyer

http://www.sfwriter.com/essayia.htm

「ニュースは大好きだよ」と語るソウヤー氏はカナダ人。カナダの裁判制度はアメリカのそれとは異なっており、シンプソン氏ほど華麗なセレブも存在しない。アメリカ全土を巻き込んだあの狂乱から一歩離れたところで、前作『スタープレックス』を書きながら隣国の裁判制度を観察していた彼の冷静な視点が生かされているようだ。

では日本ではどうなるのだろう。特に、これから導入される裁判員制度のもとでは。でもなんとなく、この国では外交的な超法規的措置がとられてしまいそうな…。