花巻をひねった。

練り消しひねりは楽しいが、腹はふくれない。たまには食べられるものをひねろうというわけで、ずっと片想いだった花巻にトライ。これはかんたんにいえば饅頭の皮の部分で、蒸し上がって熱々のところにいろいろなものをはさんで食べる、大陸北方のパンのようなものである。

ふだんケーキは焼くけれど、パンなどの練り粉物には手を出したことがないので、ちょっととまどったが(イーストの扱いとか、発酵の回数や温度がよくわからなかった)、なんとかそれらしいものが出来上がった。どうやるとあの形になるのか不思議に思っていたのだが、ネットのレシピを見ながら自分でやってみて、やっと納得した。味付けなしのプレーンなので、ザーサイをはさんだり、黒蜜をたらしたり。食べ終えて、ものすごくおなかがいっぱい。饅頭の皮だけをもそもそつめこんだのと同じなので、当然か。

昔、駅のそばに小さな中華惣菜屋さんがあった。一間しかない窓を覗くと、華人の夫婦(大陸の武漢から来たと云っていた)が忙しく働いていて、ときどきそばを通ったときは美味しいと評判の野菜餃子を買っていた。

ある日、昼間に店に寄って夜の惣菜を求めたときに、蒸篭のなかで蒸しあがっている花巻がとてもおいしそうに見えた。昼飯前だったこともあって、思わず、ひとつくださいというと夫婦は顔を見合わせた。何かはさむのかと旦那が尋ねてきたので、首を振って、車の中でそのまま温かいところを食べるのだというと、奥さんの方がそれではいけない、これは何かをはさんで食べるものなのだと云って、手作りのザーサイをサービスではさんで、手渡してくれた。

花巻を食べたのはそのときが初めてだった。車に戻って、包みを開けたときに、ふわっと立った湯気のあたたかさは忘れられない。

店はもうなくなってしまったけれど、彼らは今もどこかで餃子をつくり、花巻をふかしているのだろうか。