白蛇の洗礼

毒草師 白蛇の洗礼

毒草師 白蛇の洗礼

『白蛇の洗礼』を読了。この「毒草師」のシリーズでは一貫して、九品仏や自由が丘など東急大井町線沿線を舞台にしている。このあたりには友人知人の住まいもあって、いろいろとなじみが深い。さらに語り手の勤め先である「小さな製薬業界紙の会社」というのは、某ドラ■ガ社みたいなもんかな、などと昔の仕事絡みの知識を総動員して脳内映像を補完できたのはラッキーだった。

今回は特に、ミステリというよりも、毒にまつわる奇想を小説に仕立て上げたものといったほうがわかりやすいかもしれない。ベースになるネタそのものは澁澤龍彦氏などの著作に馴染んでいれば目新しくはないが、それでもさらさらと、面白く読めた。続刊が楽しみだ。

このシリーズで謎解きを担っている冷ややかな毒草師・御名形のファーストネーム、史紋(しもん)からは、どうしても、Simon Magus、聖書に登場するグノーシス派の魔術師シモンを想像してしまう。「異端の父 Father of Heresies」の名を持つシモンは、ファウスト博士の元型ともいわれている。御名形と魔術師の間に関連が本当にあるのかどうかは別にして、そういう怪しげな雰囲気だけはよく似ていると思うのだが、どうだろう。