王子様になったオレ。

朝、子供を送り出そうと思って玄関に出た。

彼の通学用革靴が横に寄せてあって、そのままでは履きにくい状態だったので、たたきに降りてつっかけをはき、黒い小船が二艘並んでいるような靴(サイズ27センチ)をそろえて、真ん中においてやろうとした。その時、頭上で息子の嬉しそうな声がした。

「なんか今朝のおれって、王子様みたいだなあ」

「なんで」

 顔を上げて尋ねると、彼はえへへっと笑った。

「さっき(朝食のときに)、食べたいと思ってた林檎が剥かれて出てきたし、こうやって靴をそろえてもらうなんて、王子様みたいじゃね?」

「……王子は王子でも、うんと小物の王子っぽいな」

本人はなんだかほくほくしていたようだが、普段ものすごく虐待してるみたいに聞こえるから外で誰かにいうのはやめてほしいと思った。