修道女フィデルマの叡智

修道女フィデルマの叡智 修道女フィデルマ短編集 (創元推理文庫)

本国版の短編集『Hemlock at Vespers』から「聖餐式の毒杯(1996)」「ホロフェルネスの幕舎(1997)」「旅籠の幽霊(2000)」「大王の剣(1993)」「大王廟の悲鳴(1998)」を収録した短編集。

時代は7世紀。アイルランド五王国のひとつであるモアン王国(アイルランド南東部、現マンスター地方)の先王の娘のフィデルマは、キルデアの修道女にして法廷弁護士であり、大王の前でも着席が許されるほど高位の裁判官でもある。彼女の謎解きの鮮やかさもさることながら、厚みのある歴史背景の描写が面白かった。アイルランドが初期のキリスト教的学識の集積地であったと世界史で勉強したのは大昔だが、やっと納得できたかも。すでに刊行されている長編二作にくわえて、今年秋にも新刊が出るらしいので楽しみだ。

解説によると、トレメインの作品は『インスマス年代記』下巻にも収録されているとか。タイトルは「ダオイネ・ドムハイン」。アイルランドのみならず、そちらのほうにも造詣が深いらしいw