紅い首輪。

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数日前のことだ。

いつものように朝の庭に偵察に出た猫が、首輪をなくして帰ってきた。

ちりちりと小刻みに鳴っては彼女の悪行を密告する鈴つきの赤い首輪がないと、ふてぶてしい野良猫にしか見えないので、これは困ったということになった。

家族がさっそくペットショップに赴き、小型犬用の首輪を調達してきた。ふつうの猫用の品では、あの猪首にはサイズが小さかろうという判断は正しかった。赤地に白ドット模様の新首輪を装着した彼女はもとどおりのふてぶてしい飼い猫に戻った。


猫は、今日も嬉しそうに出ていった。

しばらくたって帰って来て、口にくわえていた長いものを床にぽとりと落とした。

失くした首輪だった。


首輪は、この数日の悪天候にもかかわらず、濡れていなかった。どこにあったのかはわからない。

犬ならば、お気に入りのおもちゃを庭の隅に隠したり、取り出して遊んだりすることはあるだろうが、猫がそういうふるまいをするのはあまりきいたことがない。

前にも同じ首輪を失くしたことはあって、そのときは息子が探しに出て、運よく見つけて拾ってきた。今回も探したのだが見つからなかったのだ。猫の習性として、蜥蜴や蝶など動くものに興味を引かれてくわえることはあっても、地面に落ちて静止している物体をわざわざ口にくわえてもって帰ってくるというのは考えにくい。あの首輪でじゃらして遊ばせたこともなかった。

新しい首輪が、そんなに気に入らなかったのだろうか。


猫は家族全員からほめられ、なでられ、そしてふてぶてしい「化け猫」に昇格した。

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