みすず臭ただよう。

フロム・ヘル 上

フロム・ヘル 上

表紙はともかく、だ。

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まあ、たしかに、いつかは読みたいと思っていたが、たまたま本屋で見つけた本を裏返したのがよくなかった。裏表紙の、写真と活字と余白が三位一体となって醸し出しているおなじみのみすず臭にやられて、ふらふらとレジへ。

『夜と霧』や哲学書など「学問的な」良書を出しつづけているみすず書房が、この血みどろのコミックスを出したと聞いたときは驚いたものだ。しかし読んでみれば影の世界の歴史と知と妄想を吸い上げて咲く後ろ暗い悦楽に満ちて、くろぐろとした頁をめくる手がとまらない。遠い昔、仁賀克雄氏の著作で初めて出会った名がパズルのかけらのように散りばめられて、ヴィクトリア朝の裏世界の名士たちが次々と登場してくるのが楽しい。

いや、とにかく仕事をしなければ。