AIの遺電子

 

 『AIの遺電子』の新シリーズ。ヒューマノイド専門医スドウは、違法コピーされた自分の母親ヒューマノイドの人格を探すために、単身海外へ飛ぶ。

外見からは、ヒツジに似た横長の瞳孔以外ほぼヒトとかわらないヒューマノイド(知能的にも身体的にも強化特化はされていないので、まったくの一般人レベル)が人間と混じり暮らす未来社会を淡々と、しかし鮮烈なテーマを込めて描く前作を読んだとき、短い一話完結スタイルであるにもかかわらず、各話が提示する視点の鋭さはもちろん、描き方といい、話運びといい、あまりに上手くてびっくりした。

今回、RED QUEEN編の一巻巻末の押井監督との対談で、山田氏の前職が記者だったと知ってたいへん納得した。取材から得たものを限られた字数で過不足なく料理するスキルは、漫画家になった今も遺憾なく発揮されている。押井監督が「アニメの脚本作りにほしい人材」と言っているのもうなずける。これだけのレベルをどこまで維持できるのだろうと思っていたが、二巻まで読んで(今回は長編である)その心配は杞憂だと知った。続刊がとても楽しみだ。

 

記者といえば、話は変わるが、息子の同級生のひとりが来年から某紙の記者となると聞いた。それぞれの道に進む彼らに幸あれ。