御書物同心日記―虫姫、月魚

御書物同心日記 虫姫 (講談社文庫)

御書物同心日記―虫姫

作者: 出久根達郎

出版社: 講談社

発売日: 2005/06

将軍様の蔵書を守るお侍の丈太郎が主人公のシリーズ三作目。作者の出久根氏は本職の古本屋さんなので、江戸時代の同業者たちに事寄せて業界の裏を書いているのが面白い。この本は丈太郎が自覚の無いまま失恋してしまったところで終わっているが、先は出ないのだろうか。

今回活躍している糴取師(せどりし=古本屋を巡って高く売れる本を仕入れては別の古本屋に売る。転売で差額を儲ける仕事)については、三浦しをん氏の『月魚』(角川文庫)で読んだことがあった。せどりが江戸時代からあった仕事とは知らなかったな。最近はブックオフを漁場にして稼ぐ素人せどり屋さんが増えているようだ。検索したらそういう関係のサイトがいっぱいひっかかってきてびっくり。流行の副業ビジネスになっているらしい。

月魚 (角川文庫)

同じ古本屋ネタながら、こちらは現代が舞台である。主人公の片割れがせどり屋の息子だった、と思う。もうひとりの主人公は店を持っている古本屋だが、まだ若いのに着流し姿のはかなげな美青年である。友人の勧めで読んだ当時は、まるで中禅寺@京極夏彦氏のアレみたいだと思ったものだ。ボーイズラブが好きなひとは主人公二人のあやうい雰囲気にハマるんだろうなあ。ひややかな読後感を残す佳作。


『勇猛なるジャレグ』読了。四月に続刊が出たらまた読もう。作者はゼラズニイ好きらしい。なるほど、主人公のクールさがそれっぽい(笑)