静かに沈んで。

小学校のころに流行ったなぞなぞがある。

「池を見ていると石がしずんだりもぐったりしていました。さて、どうしてだ?」

こうして活字にしてみればなぞなぞともいえないような代物なのだが、さらりと早口で云われるとひっかかる。自分だけでなく、ほかのみんなもうーんうーんと悩んでいた。意外なほどひっかかるひとが多かった。

似たような問題で「風呂屋のおばさん、男か女か」というのがあった。いまかんがえると、違う意味で酷い。年をとると無性化が進行するひとたちが居るのはたしかだけれど。


堀江氏の『河岸忘日抄』をゆっくり読んでいる。

物語は、フランスの某河岸に繋いだ船の中でかりそめの生活を送る主人公の独白でつづられる。とりとめのない日常が呼び起こす追憶と内省のなかで彼は暮らしている。フランス語と日本語、ミルフィーユのように相互に折り重なる言葉の連想の波に揺られてふわふわと流されていくのが心地よい。自分がいま、主人公と同じロング・バケーション中(無職って書けや)だからなお沁みるんだろうか。水底にしずんだりもぐったり状態だからこそ見えてくるものもある。とはいえ、流れる水の力のただなかで静止していることは不可能で、ふと気づけばもと居たところからはるか遠くまで流されているものなのだが。


ケーブルテレビで、ラスヴェガスが舞台の元祖『CSI』をやっているのに気づいた。地上波放送の『CSI:マイアミ』も観ているので、一日2時間を海外ドラマに費やしていることになる。数ヶ月前までは考えられない贅沢な時間の使い方に眩暈がする。

あ。『サウンド・オブ・サンダー』のCMだ。

原作であるブラッドベリの『いかずちの音』を読んだのはン十年前だが、話中で人々の破滅のもととなるのが、愛するアレ(ネタを割ってしまうので伏せる)なのでいまだに印象に深い。突き放すラストゆえに恐怖が深まるあの短編を長編映画に仕立ててしまうなんてさすがハリウッド…。やはり過去改変を扱った映画『バタフライ・エフェクト』くらい、きっちりとまとめてくれているといいけれど……まあいいや。出来を確かめに観にいこう。