ワタリガラスの翼のもとに。
久世氏の『美の死』読了。
雑誌『Coyote』をつらつらと読む。
96年に亡くなった写真家の星野道夫氏を偲んでアラスカにトーテムポールを建てるプロジェクトが発足したそうだ。彼の著作に親しんでいるひとならば、なんでトーテムポール? とは思うまい。
感覚の扉をすべて閉ざして仕事をしているあいだにも、どこか遠くには、何にも邪魔されない自然が息づいている。一瞬と永遠、有限と無限のなかほどに立って空と足元を見回す眼を与えてくれたのは星野氏だった。
きっかけは、カナダのThe University of British Columbia (ブリティッシュ・コロンビア大学)の敷地内にあるMuseum of Anthropology at UBC(人類学博物館)で出会ったBill Reidの木彫り「The Raven and the First men」(画像)だ。あれの存在感に惹かれて、資料の少ない北米の北西沿岸の先住民、Haida族やSalish族について調べ始めたころ、ある写真家が女性誌に連載している記事に気づいた。アラスカでワタリガラスの伝説を追っていると書いてあって、自分の知りたいことのど真ん中を取材しているひとがいることに感激した。それが彼だった。
来年はもう十三回忌だ。
トーテムポールが建てられるとき、人々が仰ぐ夏のアラスカの空は美しかろう。