サイコキラーとかテロリストとか。

締め切りが集中した昨日は地獄だったが、今日はわりと余裕があった。疲労で頭が回らないので早々に切り上げて出た。普通のひとたちがたくさん歩いている時間に帰るのはひさしぶりだ。

横光利一の短編集は昨日でおしまい。文豪のお手並みに大満足。今日から読み始めているのは平山夢明氏のデビュー作『Sinker―沈むもの』(徳間書店ISBN:9784198503130)。子供が酷い目に遭う話は好きではないのに、この本は、そのヤバいところに直球ストレートらしい。うーん。でも平山氏なので期待は裏切られないだろう。活字でつづられた精緻な地獄を読むうしろめたさもまた好いものだ。『メルキオールの惨劇』を立ち読みしたときの黒い陶酔をまた得られるといいのだが。…と書くと本当に麻薬中毒みたいだな。

本屋に寄ったのは、息子から頼まれた漫画を買うため。

鋼の錬金術師(16) (ガンガンコミックス)

鋼の錬金術師(16) (ガンガンコミックス)

上記を片手に持ってハヤカワ文庫の棚の前を流しているときに、平積みになっている新刊をぜんぶ買って帰りたくなったので*1身の危険を感じて退散。

そう遠くない過去、小説に登場するテロリストや国家転覆犯は一種の荒んだ美学を感じさる存在だった。蹠の柔らかい豹のように鎮静と興奮の間を行き来する策謀家たちの似姿としては、例えば、野阿梓氏の連作に登場する革命家レモン・トロツキーや、佐藤亜紀氏の『1809―ナポレオン暗殺』のウストリツキ公爵を想像してもらうとちょうどいいだろう。

だが911以降、テロリストの定義は変わった。要人や体制を狙うのではなく国家を戦場として無差別大量殺戮を繰り返し、敵の首を切り落とし、自爆も厭わない生きた凶器。それが21世紀のテロリストのステレオタイプとなって久しい。彼らが世界中にばらまく血と硝煙の向こうに消えていった古典的なテロリストの姿を、今日、何気なく手に取った本の中に見つけた。

蒼ざめた馬 (岩波現代文庫)

蒼ざめた馬 (岩波現代文庫)

著者ロープシンの本名はサヴィンコフという。ロシアの革命家であり、暗殺の手腕に長けた真正のテロリストだ。本物が書いている革命家たちの物語が、この『蒼ざめた馬』なのだ。出だしを読んでみたらあまりにニヒルで、ちょっと倒れそうになったんだけれど、面白そうなので買ってしまった。

こっちもゲット。

皇国の守護者 4 (ヤングジャンプコミックス)

皇国の守護者 4 (ヤングジャンプコミックス)

漫画版は今のところここまで。あとは原作のノベルスを読むしかないのだが、図書館で予約したらずいぶん待っているひとがいた。佐藤大輔氏、噂には聞いていたがとても人気のようだ。借りられるのは当分先だろうな。

*1:本屋で狂戦士と化す前の徴候。キレると見境なく買いまくるので大変危険。