それがジョロウグモの理ですもの。

雨戸を開けると、庭の真ん中にジョロウグモが巣を張っていた。おお、秋だなあ。大きなクモなので身体に比例して巣の直径も大きい。つっかけを履いて近付くと、黄と黒の装いの巣の主は中心部に近いところの仕上げをしているところだった。最後部の脚一組で縦糸を引き寄せては腹端部にくっつけ、横糸で繋げていく。張りたてだから全体の模様は綺麗に整っている。獲物がかかるとあっというまに失われてしまう幾何学的な美を破るのはためらわれて、庭掃除の日までは放置することにした。

ジョロウグモの一族のしきたりではこの立派な巣を張るのは雌で、小さな雄はそこに間借りして暮らす。彼らは自分よりサイズが数倍大きい雌に取っ捕まって生き血を吸いとられてしまうリスクを冒しつつ、交尾の機会を狙うのだそうだ。地味な体色でひよわそうな雄を見ていると、いま巣を破ったら、逃げていく雌を葉陰で見失って干上がってしまうんじゃないかとか、余計な心配をしてしまう。それとも、またどこかのふくよかな雌の御殿を見つけてさっさと転がりこむんだろうか。小さい頃から毎秋見てきたけれど、彼らの生活史についてはなんにも知らないな。