高橋敏夫教授の早大講義録 ホラー小説でめぐる「現代文学論」

 文学を含む芸術では、最終的には誰も力をかしてくれない。しかし、あなたを非難し、強制あるいは矯正する者は誰もいない。自分じしんが見たくない考えたくない、そして「他人には絶対に言えないこと」を肯定し、それらをつつみこむ生の全体を、言葉やイメージや音の微細な、あるいは絢爛たる炸裂に変える、たったひとりの「教科書」のないいとなみを持続しよう。

 そのとき、あなたは、ひとりではない。ここでは、ひとりではいられない。たったひとりのいとなみを、それぞれに夢想する人たちが、相互に共感をもって接する暗黒のパラダイス、世間的光明のただなかに突きでた暗黒の砦なのですよ、文学部は。 (p.5より引用)

文学部ってそんなにうしろめたくて甘美な暗黒のパラダイスだったのかと目からウロコ。早大って面白い講義やってるんだな…。