悲しい職業病。

本を読んでいるときにいちばん困るのは誤植だ。仕事で培われてきたスペルチェック本能が刺激されて視界が不意にくっきりして、読み続けるのに必要な集中力がとぎれてしまう。

われながら細かいとは思うが職業病なので、どうしても心情的にスルーできないのだ。広報にいたときはニューズレターや人事異動ネタの誤植など本当に致命的だったし(課長と読み合わせを何度やったことか)、特許の明細書でも書式や文に間違いがあってはいけないし(最悪数十億円の不利益が発生する可能性がある)、企業のセミナー用スライドの翻訳チェックでも…。そんなことを繰り返しているうちに、性格はものすごくずぼらなのにここだけが突出してしまったらしい orz

きのう読んでいた本では「ウリウス二世」にひっかかってストップしてしまった。翻訳者の好みや思い込みかもしれないし、編集のチェックから漏れてしまった誤植の可能性もあるかと思いながらその語でググって見るとヒットはわずか2件。よく使われている表記と思われる「ユリウス二世」では1170件。

その本の文脈では、あきらかに後者が一般的である。

翻訳者は、外国の固有名詞を訳すときは表記を確認する義務がある。クライアントの定めるスタイルガイドがないのであれば、社会で一般的とされる表記に従うこと。読者を第一に考えるなら、それが当然だと思う。好みで訳語を変えられてしまっては混乱するばかりだ。

そういう点から見ると「Cthulhu」は訳者泣かせだ。「クトゥルー」「クトゥルフ」「ク・リトル・リトル」…どれをとっても得体の知れない感じで、イメージにはぴったりなのだけれど。