ブレード・ランナー ファイナルカット

観る前に感じた危惧は杞憂だった。SFファンを続けていてよかった(泣)

2019年、酸性雨がふりそそぐ暗黒のロサンゼルス。地球外の作業現場から脱走してきて人間のなかにまぎれこんだレプリカント(人造人間)を捜して、刑事デッカードは薄暗い街を彷徨う―――。P・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』をベースにした1982年公開のSF映画。最新CG処理で細部がパワーアップして、さらに見ごたえが増している。

最初の公開年を聞けば、いちども観たことがないひとは古くさそうな映画と思うかもしれない。いやいやいやいや。いいから観てほしい。CG技術によって何でもありになった今の映画とまったく遜色がない。というかもっとすごい。この映画が描き出してみせた未来のイメージこそが、いわば現在の作品群の始祖なのだから。

映画館から降りていくエレベーターのなかで、四十過ぎの男性が、連れの若い女性に微笑みかけながら、しかしどこかじれったそうに云っていたのが印象に残った。

「観たのは、高校二年のときだったなあ。薄暗くってずっと雨降ってて、バンバンって銃撃って、スモークがそこらへんで流れて、ああいかにもってかんじの演出だって思うだろう? いまどきの映画なんかじゃふつうだよな。でもなあ、あの映画が最初だったんだよ…」