崖の上のポニョ

連休中に『20世紀少年』を観にいく息子とその友人たちのために予約チケットを買いに行った。そのまま帰るのもつまらないので、ポニョを観て来た。本当は『ハンコック』にしようかと思ったのだが、上映スタート時間が都合に合わなかったのだった。

いいかげん評も出尽くした頃だろうからテキトーに。物語は古典的な水妖と人間の恋愛譚である。画面の色は淡くて、白昼夢を観ているような感覚がさいごまで残る。

母親が「お母さんらしくない」「がさつだ」などとネットで云われていたので、実際のところはどうなんだろうと思っていたが、観終わってみると、父親が常日頃から不在の家庭を守って働く、若い母親の姿がよく描かれていたと思う。夫が予定通りに帰ってこなくて落ち込んだリサが、幼い宗介に励まされて元気になる(宗介のために元気になったところを見せる)ところは、涙なくして見られなかった。子供たちにインスタントラーメンを食べさせるところも出てきたが、あれも、女らしくない、手抜きの家事だと思うひとがいるのだろうか。

異常事態の只中でおなかを空かせた子供を前にして、のんびりまったり手作りなんぞしているひまはない。すこしでもはやく温かいものを食べさせて、気持ちを落ち着かせるほうが先だろう。

親一人+幼児だと日常作業がぜんぶひとりの肩にのしかかってくるので、がさつとか乱暴とか、そういう生ぬるい非実践的基準ははるか彼方にすっ飛んでしまう(笑)

うちの場合は離婚が原因で父親役がまるっきり不在だったのだが、あの家の旦那も船乗りでほとんど帰ってこない人種のようだから、状況は似たようなものだろう。朝ならば、保育園と仕事に間に合うか間に合わないか、それがすべてだ。毎日の中心は常に子供の笑顔と健康。そして子供から離れたとたんに、仕事が背骨になる。

母親としての理性と直感に素直に従うリサの行動は、水の魔法に飲み込まれた世界の中で子供たちを守ろうという気遣いにあふれていたように思う。

うちの息子が結婚するとして、嫁が元魔法使いで、その母君があんな人外の美形だったら楽しいのになあ。