旅立つ者あまりに多ければ、眠る本の背みな墓標の如く。

アニオロフスキ編・大瀧啓裕訳『ラヴクラフトの世界』(青心社)を半分読了した。始祖たる御大ラヴクラフトが愛し、怪異譚の舞台に選んだ街や地域。そこで起きる怪異を描くさまざまな作家の短編を集めたもの。佳品揃いである。生まれてはじめて読んだクトゥルー作品も青心社から出た大瀧氏訳のハードカバー版だったので、自分のそもそもの原点をあらためて見直すような感覚を覚えて、嬉しくなった。わくわくしたのを忘れないうちにまた練り消しで何かつくろうか。

早川FTの『ミストボーン』一巻もあと半分。合金術 allomancy の設定が面白い。

スタトレ10作目の映画ノベライズ『ネメシス』も読んでおかないと。スタトレ本を何冊も翻訳した故・斉藤伯好氏には、ムアコックのシリーズでも大変お世話になったのを覚えている。彼のほかにも、流麗な訳文で知られた浅羽莢子女史、精力的な仕事の途中で倒れた黒丸尚氏、みな文芸翻訳という独特のジャンルにそれぞれの仕事を刻んで去っていかれた。書き手の訃報を聞くことも多い。先日亡くなった栗本氏については、ここで言葉にして語ることもできないほど多くを負っている。そしてあまりに若くして病にとりころされてしまった伊藤計劃氏…。クライトンもバラードも、もういないんだった。

思えば寂しさがつのるばかりだ。