レポメン

レポメン (新潮文庫)

人工臓器はすばらしく進歩した。が、あいかわらず高価だ。融資を受けて、それを埋め込んだその日から、客は高額のローン支払いを迫られる。滞納すれば、人工臓器の取立て屋(バイオ・レポマン)がやってくる。彼らの合言葉は「ガス、取る、去る」。滞納者にエーテルを嗅がせ、メスを駆使して臓器を抜きとり、屍の上に取り立て完了のレシートを置いて現場から去っていく彼らを、誰もが恐れていた。

支払いが遅れることに対する罰則、圧力、取り立てにいたる可能性については、あらかじめ説明がされる――それが法律なので――しかし、ほとんどの客は融資が受けられることで舞いあがり、目の前に置かれたものにかたっぱしからサインしそうになる。それでも不幸にして肝臓を悪くした者がリストに名前を載せて待機し、肝臓の悪くない者が不幸にして悲惨な、ただし肝臓は無傷の死に方をしたら、十回のうち八回は体内で拒絶反応を起こす生体肝移植の順番がめぐってくるという時代にくらべればましだ。

実際に機械やケーブルを埋め込む手術を受けた親戚が複数いるので、あれが取り立ての対象になったら、と縁起でもない想像をしてしまった。こわいこわい。読了後に最初から読み直すと、何気ない描写を装ってばらまかれた伏線が読み取れる。とおりいっぺんのSFではない。ラストは好き嫌いが分かれるだろうが、物語はよく練られて完成度が高い。変わった物語が読みたいと思うひとにお勧め。