妖精の女王

妖精の女王 (創元推理文庫)

妖精とはいっても、鼻血が出そうな露出度を誇る衣装をまとった今時のゲームキャラではなく、英国やアイルランドなどの伝説に残る古式ゆかしい「フェアリー」を想像してほしい。王や女王を頂く宮廷を中心に、姿形や性格も人に近いものから化け物めいたものまでさまざま。所属する階級や種族を問わず共通しているのは、みな人間に対してはとても意地悪で、場合によっては死の危険までもたらす、完全な異界の存在であるということ。

本作のヒロインは、人間には不可視である筈の「彼ら」を見る力を持つ少女である。彼女は、やはり見る者である祖母から、街のいたるところに居る彼らの姿を見て見ぬふりをするように教えられて育ってきた(妖精は自分の姿を見る人間を嫌って、その目をえぐり出そうとする)。これからもずっと、そうやって過ごすはずだった。美しい妖精王に追われるようになるまでは。

正統派妖精譚の「お約束」をひとつひとつ踏襲しながらも、ラストではきっちりと現代的なヤングアダルトラブロマンスに仕上がっていて楽しめた。『トワイライト』はあきらめたが、こちらはいけそうだ。二作目もちょうど出たばかりなので、そのまま続きを読む予定。