シュレーディンガーの老人。

部屋の扉を開けて観測するまで生きているか死んでいるかわからない長寿のひとびとを、有名な量子論のたとえ話にあてはめてそんなふうに呼ぶらしい。誰がうまいこと(略)と思いながらも、あまりにぴったり過ぎてはじめて見たときは吹いた。

年金詐偽云々はともかく、家の中に開かずの間があって、こっそり覗いたら頭蓋骨が見えて、放置して数十年経っていて…うちの怪談カテゴリである「よくわからない話」に押し込みたくなるような話だ。

何年前だったか、親の遺体を自宅の大型冷蔵庫に保存していたところ、運悪く冷蔵庫が壊れて異臭が漂いはじめ、それで通報されて捕まったひとのニュースを聞いたことがある。保存した理由が年金詐取か葬儀代をけちったからかは忘れたが、近所はみなご遺体in冷蔵庫の事実を知っていたと報道されていたのが強く印象に残っていた。

絶望が死に至る病というなら、無関心もまたたちのわるい病だ。某作家氏の表現を借りれば、煙にも土にも食い物にもなれずに書類上だけで生きている非実在老人が、これからもわんさか見つかりそうで怖い。