フロム・イーブル~バチカンを震撼させた悪魔の神父~

「フロム・イーブル」は、カトリック教会の神父による子どもたちへの性的虐待の実態を記録したドキュメンタリー映画である。何十年にわたりおぞましい性的虐待を続けてきた神父と、それを知りながら握りつぶし、被害を拡大させた司教らカトリック教会の幹部らの腐敗堕落が浮き彫りにされている。

ライナーノーツ(後藤啓二氏)より引用

TOKYO MX放映の「松嶋×町山 未公開映画祭」で紹介された作品のひとつ。原題『Deliver us from evil』は、主の祈りの一節「われらを悪より救いたまえ」から取られている。

カトリック司祭による児童虐待問題に関してはたびたび耳にしていたので、吐き気を催すような内容だろうと思いながら借りてきて、やはりものすごく気分が悪くなった。ある日教区にやってきた新任司祭は、欲望のままに信徒の子供たちに暴行を繰り返す幼児性愛者だった…サイコホラーでもなんでもなく、ほんとうに起こったことなのだ。さらに、彼を監督すべき教会上層部は知らぬ存ぜぬを貫き、行く先々で問題を起こす彼を違う教区へと異動させるだけ。あいた口がふさがらないような凄まじい証言が続いて、カトリックとその総本山に対する不信と絶望がむくむくと黒雲のように胸に広がった。

アメリカで数年の刑期を務めたあと、今はアイルランドで自由の身(教会に飼い殺しにされているともいう)になっている虐待者自身が自分の幼時の被虐待体験を語っているのを聞いて、虐待が世代を超えて連鎖するというのは本当のことなのだなと思った。

GPSでも薬剤療法でも宮刑でも、とにかくあらゆる手を尽くして再犯を防ぐことはできないのか。本当に、ぞっとするようなドキュメンタリーだった。