火をつける子供たち。

ここのところ毎晩ログインしている。日記は癖になる。何も生産的なことは書いていないし、読んでくれるひとがどれくらいいるのかもわからないが、それでも書くとすっきりする。なるほど、ネットにブログや日記があふれているわけだ。


家族に対する不満を火付けで晴らすのが流行になっているようだ。自分以外の人間ならば、家族でさえも「消費」あるいは「抹消」してもかまわないと思う人間が増えているのだろうか。逮捕されてから、殺してしまった家族にあやまりたい、と反省の辞を述べる者もいる。だが、死者に想いを届けることは不可能だ。悔恨の情を示しているというよりは、自分を取り巻く状況の想像以上の激変/悪化におそれをなして漏らした弱音とも思える。イジワルな見方かもしれないけれど。

謝ってすべてが済めば、ほんとうにいいのに。これは家族のつながりを試すテストだったんだよとかいって、焼け死んだはずの家族がもとの姿で生き返ってくれたら。でも、そんなことはぜったいに起こらない。かわいそうに。

親や家族を手にかけた子供たちには、なるべく長生きしてほしい。そして子供をもうけてほしい。そのときこそ、自分が何をしたのかがわかるはずだ。どうすれば、罪を償えるのかも。


「それでなに?」

「べつにぃ」<やや語尾上げる

息子が上記の言葉でこちらの問いかけに応えた場合は、即刻鉄拳制裁を行うことにしている。いずれも、それ以上会話を続ける気力を瞬時に蒸発させる、黒魔法の呪文だからだ。わずらわしい人間関係を打ち切りたかったら、上の言葉を交互に唱えるといい。いずれ誰もよりつかなくなる。心休まる孤独が訪れるだろう。死ぬまでひとりになれる。永遠に、ひとりだ。

過去と他人は変えられない。変えられるのは自分だけ。

先々後悔しないように、すこしずつ軌道修正していこうと思っている。ある朝突然何かが、なんてのはありえないから、すこしずつすこしずつ蟻の歩みで。


以下、無駄話。

油を撒いて火をつけた人間はたいてい火傷を負う。気化した油が引火するからだ。ガソリンなんてのは気温マイナスでも気化する厄介なシロモノである。うまく放火するのはとても難しい。現場に慣れた者の眼をごまかすのは、さらに至難の業だろう。

炎は、現場は、声なき声で以下のように語りかけてくるのだ。


Read me, you're so smart.

I've left it all here for you but you have to know the language.

You have to speak my tongue.

         ------"California Fire&Life" Don Winslow 

詳しくはウィンズロウ『カリフォルニアの炎』(角川文庫)をどうぞ。火災保険調査員が主人公なので放火の薀蓄てんこもりである。

カリフォルニアの炎 (角川文庫)


英語が気にならないひとは原書を薦める。ハードボイルドのお手本のような、クールな文体が楽しめる。