夏といえばヨコミゾだったころ。

職場の昼休みに、小松左京日本沈没』と筒井康隆日本以外全部沈没』の映画化を伝えるサイトを見た。最初の映画化は三十年前か…。ぶくぶく。<本人が沈没

おなじく筒井氏の『時を駆ける少女』も貞本氏@エヴァのデザインで映画になったようだ。年を重ねるといろいろなバージョンが観られて面白い。『スパイ大作戦』が『m:i』みたいに派手な映画になるとは思わなかったし。

小学生の頃、夏の映画といえば横溝正史原作の角川映画が定番だった。「イヌガミ家」やら「女王蜂」やら、映像にもストーリイにも独特の湿った感じがあって、しかも宣伝がやたらとホラーっぽかった。映画館に観に連れていってはもらえなかったけれど、駅にずらりと貼られたポスターから映画の「アレ」な感じは十分に伝わってきた。日本のミステリ=「奇怪な状況と人間関係の中で起きるどろどろ情痴殺人。探偵はかならず変人」というイメージを長く抱き続けることになったのはあそこらへんに原因がありそうだ。ミステリにはそういう入り方をしたせいか、舞台の書き割りめいた現場で数学的な条件と精緻な論理を駆使して犯人を割り出す新本格系のドライさにはどこか気後れを感じて、あまりすすんで読もうとは思わなかった。しかし、棚に並ぶ背表紙の中でも群を抜く厚みに惹かれて手に取った京極氏の例のシリーズは両者のミックスのようで心地良く、そのうちに新本格にもアレルギーを感じなくなったのだった。

今回、有栖川氏の密室図鑑を読んでいたら、横溝正史の『本陣殺人事件』は海外の本格ミステリ(カーなど)に影響を受けている、という記述を見つけた。読んだ当時(小6だった)は、いかにも和物な道具立てに眼を奪われてしまって、ぜんぜんそんなふうには感じなかったが、今読めばならまた違うんだろうな。

昼休みが終わり、席から離れて溜まった新聞を始末していて目玉がこぼれそうになった。日経新聞朝刊の連載自伝『私の履歴書』、いまは小松左京氏が書いてるんですな。経済界のひとたちばかりが登場する印象があったので驚いた。氏もそんなお年ですか…。