SF者にふさわしい伴侶とは。

先日、友人I女史と飲んだときに、彼女の職場の鉄道オタクの話になった。

ある日、I女史は、四国から出てくる友達と会うことになった。しかし何という名前の電車に乗ってくるかは忘れてしまったと、その鉄道君に世間話のついでに告げると、彼は当該特急の名前をすらすらと云い、東京駅のどのホームに何時に入るかまで教えてくれたという。彼が鉄道オタクであることは、職場の皆が知っていて、何かの飲み会のときに誰かが何気なく「いちばん好きな電車は?」と尋ねたところ彼は考え込みすぎて答えられなくなってしまったそうだ。

気持ちはよくわかる。

自分も、どの蝶がいちばん好きかと聞かれたら、即答できないからだ。

仕事の合間に、「今日の早川さん」を読んで、上記の話を思い出した。鉄道オタクはともかく、SFやファンタジー、ミステリをこよなく愛する者はいかにすればふさわしい伴侶を得ることができるのか。

深過ぎる読書の趣味を前面に押し出して探すのが難しいなら、最初は「本が好きなんです」くらいのかわいらしい切り売りでも、と思うが、それで相手がもし「僕もセカチューは読んだよ。ああいうの好きだなあ」とか云い出したら、SF者は黙ってはいられないだろう。つーか地雷? 「ふふ、お若いの、世界の中心って、あのタイトルはな!」と、ネタ元のハーラン・エ■スンばりの毒舌機銃掃射が始まるのが目に見えている。といって、新本格ミステリ第三帝国の親衛隊員と理力(って昔は書いてたんだが)を信じる野田宇宙大元帥配下のジェダイ騎士の組み合わせも、すれちがいそうでアレだし。といって、ぜんぜん本を読まない相手だと……。うーん。かえってそのほうがいいのか? マニアの相手はマニアがいちばん楽なのは身をもって知っているのだが…。

趣味に干渉されたくはないが微量の理解は欲しい。伴侶を探すときは、そのさじ加減が難しい。がんばれ早川さん。