灯油を買う。

近所の買い物から帰ると家族が飛び出してきて「灯油が切れた」という。食堂をあたためるヒータの燃料が切れてしまったのだ。前に入れてからもう十日経ってしまっていたらしい。こんなに寒くて、客人もいるのに、まったくなんという手ぬかりか。

いつも配達/補給作業をしてもらっている店は、日曜日は配達サービスをしていないので、こちらから買いに行った。頼りなさげな高校生バイトらしい坊やに「いつも配達してもらっている■■だけれど、売ってもらえますか」と尋ねると彼は奥に引っ込んで、上背もあって屈強そうな、しかしやはり高校生くらいの年のバイト君を連れてきた。

明るい色をしたポリ容器を買い、それに灯油をたっぷり入れてもらって、車に積んで急いで帰った。最初はポンプで、そのあとは容器に備え付けのホースでタンクに注ぎ込んだ。作業そのものは苦にならないが、油くさくて閉口。

容器は重くて、なかでぴちゃぴちゃと音がした。

ひとにはいえないおぞましい決意を秘めて、誰かあるいは何かに火をつけようとする人間の暗いうつろにも、この音が響くのだろうか。

鼻をつく強烈な匂いは、洗っても洗っても手に残った。