甘い嫉妬。

蜜蜂の巣が送られてきた。長いことローヤルゼリーを買っている家族のところに届いた某養蜂場ご愛顧感謝のしるしらしい。

市販のちらし寿司用のそれに似た平たいプラスチックケースの中に、四角く切られた蜂の巣がぴったりおさまっている。どうやって汚れをとりのぞくのか、混じりけなしの金色に輝く蝋の城の一画にバターナイフを入れた。溢れる蜜ごとすくい上げて鼻に近づける。いつも思うのだが、蜂蜜の香りは、色に比べると優しくない。蒸らしたような花の匂いが棒のように、むいっと鼻腔に突っ込まれる感じだ。だが、働き蜂たちが花に降りるとき、彼らの小さな身体をまるごと包む香りの強さは、これの比ではないだろう。陽の光を浴びて方角を測り、香りに誘われて仕事をこなすたびに濃密な花粉と蜜の洗礼を受ける。仕事を終えたら透明な翅をふるわせて空へと舞い上がり、女王の待つ城へ一直線だ。寝る場所、仕事、働きがい。蜜蜂には、この三つが生まれながらに保障されている。われわれ人間も、かれらと同じ社会的動物のはずなのに築きあげた社会の希薄さつかみどころのなさは一体なんだろう。

嫉妬しながら、凝縮された蜂の幸福を舐めた。どこか遠くで咲いた花と、太陽の匂いがした。