春を待つ。

ゆうべ帝都ではちらちら雪が舞ったと聞いた。

いま、居間の窓から射し込んでいる陽射しは驚くほど明るい。まばゆく透明な光線の中に、塵がゆったりと舞いながら輝いている。むかし、この時期に風邪で学校を休んで、寝こんでいるときによく見た光景だ。

忙しく暮らしていると意識する機会は少ないが、精妙で贅沢な季節の移り変わりは忘れていてもきちんとやってくる。ありがたい。

自然の時間は常に螺旋を描く。失われたと思ったものも必ず戻ってくる。動く影がなかった野原にやがては草が芽吹き、虫たちがあらわれる。風のなかに花のにおいがする季節になる。

そこまで書いたとたんに、大きな音でインターホンが鳴って、心臓が止まった。

このまえの結果が今日届くことになっていた。息子は朝「ママが開けてもいいよ」と言い残して学校に行った。彼は今夜も塾で帰りが遅い。何も考えられないまま、いそいそと玄関に出た。

門の外で待っていた郵便配達人から受け取ったレタックスの薄黄色の封筒に、臙脂色で大きく、祝という字が印刷されていた。えええー、ここに印刷しちゃうのかいと目を疑いながら封を開けてみると、たしかにそのとおりの結果だった。

ありがたいことに、幸先のよいスタートを切ることができたようだ。志望順位としてはもっとも低いところだが、このささやかな一勝は、どうしても自分に自信がもてないでいる彼をなぐさめ、励ましてくれることだろう。

とはいえ本番はこれから。こちらも気を引き締めなければ。