対決 巨匠たちの日本美術@東京国立博物館

創刊記念『國華』120周年・朝日新聞130周年特別展

「対決-巨匠たちの日本美術」

http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=B01&processId=01&event_id=5315

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家族の来客が到着する前に、学校が休みの息子を連れて上野へ。*1

昨日がスタートだったせいか、平日の昼間のわりに人出が多かった。

出展されているのは国宝が十数点、重要文化財約四十件と、美術や歴史の資料集で一度は見たことがあるような超弩級品ばかり。いくつかに分けられた会場を三時間たっぷり歩き回って堪能してきた。運慶VS快慶、雪舟VS雪村、永徳VS等伯…と、同時代に切磋琢磨しあった、または私淑したりされたりの芸術家二人の作品を並べているから見比べるのが楽しい。今までは画壇から異端視されていた画家が再評価されている例として、若冲VS蕭白なんてのもあって、おかげで念願の『群仙図屏風』を仔細に見ることが出来た。あのなんかちょっとスレスレな感じの極彩色の絵を丹念に見るのは面白かった。若冲の『雪中遊禽図』は会期前半の展示で、後半は『旭日鳳凰図』に替わる。人間の眼をして、鮮やかな羽をまとう鳳凰の原画は、まだ見たことがない。ええい、八月にもう一度行くか。

絵ばかりでなく、仏像や焼き物も逸品ぞろい。あっちこっちでうわーうわーと大喜びしているミーハーな親にアテられたか、最初はぼうっとしていた息子も、蕪村の描く人間の顔がおかしいとか、大観の雲海のひろがりがすごいとか、さいごはかなり楽しんでいたようだ。

ライバル対決の説明文の両脇には、小さく芸術家本人の似姿が描かれている。最初は誰が描いたのかわからなかったが、そばによってみて、タッチから山口晃氏の手になるものだと気づいた。帰りがけに、一階の隅で彼の原画を見ることも出来た。去年はことごとく山口氏の展覧会を逃していたので嬉しかった。計24名、独特の緻密な表現で、それぞれいかにも「らしい」似姿になっている。*2

二階フロアに設置された似姿の缶バッチがちゃがちゃ(一回200円…)にもトライして、息子に呆れられた。出てきたのは「富岡鉄斎」。このセンセイは大正までお元気だった方で、写真が残っているので、白鬚豊かな風貌はさすがに本物に似せて描かれている。が、背中の荷物にかわいいくまちゃんが下がっているのは一体…。彼が北海道旅行をしたという経緯をあらわしているのだろうか。*3

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この画像は、灯りの下で撮っているのでかなりオレンジがかって写っている。

カプセルの中の説明書はルビつきで子供向けっぽい文体だが、芦雪の説明はこんなかんじ。「芦雪は大阪に滞在中46歳の若さで亡くなりますが、その死については暗殺説もささやかれています。」うわー、いいのかそんなこと書いてw ちょいとググってみたら、司馬遼太郎がそのまんま『蘆雪を殺す』という短編を書いているようだ。そちらの筋では有名な話なのだろう。*4

この夏、首都圏で行くところに迷ったら、ぜひ訪れてみてほしい展覧会である。

こちらの記事も面白い。

http://kokka-gaiden.jp/

*1:実は夏休みの宿題片づけの一環。どこでもいいので、夏の間に美術展をいくつか回ってレポートを書かなければいけない。今日のこれが第一の挑戦。ちなみに中学生は入場無料。

*2雪舟は謹厳実直な姿で立ったまま足指でネズミを描いているし、応挙はまるまるとした子犬を抱き、若冲は足元に来た白抜きのスズメに色をつけているw

*3:缶バッジでは小さすぎて確認できない。原画を見て、ようやく何がぶら下がっているのかわかって、ずっこけた。

*4:芦雪の似姿の足元には独楽が描かれていて、息子が不思議がっていたのだが、ネットで見つけた山口氏の談話記事によると、芦雪が片眼を失った原因は独楽だったといういわれを踏まえているのだそうだ。