猫の首に鈴をつける。

となりの席でぐっすり寝ているサラリーマンの青光りする坊主頭をそっと撫でてみたくなる帰り道。


意識が空の状態で作業をこなしつづけて夕方が過ぎ、窓外が暗くなりだしたあたりからはずっと、美しい合成人間並みに共感能力を欠いているリーダー(フォークト・カンプフ法テストにぜったい合格できないレベル)に対して、彼女が全く自覚できずにいるリーダーとしての責務を果たすように説くにはどうすれば良いかと考えていた。こちらにそのつもりがなくても、個人攻撃されていると思ったら途端に彼女は殻にこもって聴く耳をもたなくなってしまうだろう。そんなことになったら、新人型地雷騒動で淀みはじめている職場の空気がもっと悪くなってしまう。誰かが云わなければにっちもさっちもいかないけれど、云わなかったほうが良かったのに、では皆が困る。

他人の気持ちを汲めず、大切な判断に際しても自分の稚い好悪ばかりを優先するレプリカント。作業をこなせば優秀だが、管理統率にかんしてはゼロ。そんな彼女の様子を、帰る間際まで注意深くうかがってから、あたりさわりのない話題を切り出して、そこからつなげて言葉を選びつつ、取るべき方策とその意味、効果を説明してみた。チームの成員がばらばらにことに当たるよりは、リーダーとして交渉対応することで、相手の正式な回答を得てチーム全体を利することができる。書いてしまえば涙が出そうに当たり前な話だが、どさくさまぎれの成り行きでリーダーに選ばれた彼女は、それが自分の仕事とはまったく思っていないのだった。

言葉を操るのは生来得意ではないのに、どうしてこんなことをしているのやら。