迷路。

コンクリの鯨の腹に飲み込まれたような気分で、面談の順番を待っている。年に数回訪れる機会はあっても、全体をじっくり回ったことがないからか、いつまでたっても内部の構造が把握できない。ここまで歩く間に吹き出した汗が、長い長い廊下を渡る風に気化していく。吹奏楽部が練習しているらしい曲や音の断片がくぐもって響く。人影はない。家からも職場からも、どこからも遠い。船から切り離されて沈んだ小さな深海探索艇のようにただ静止して、教室の扉が開くのを待っている。

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