神と脱獄。

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ストロスの『The Fuller Memorandum』は、50ページまで読んだところで自宅仕事の依頼が来て、泣く泣く中断。

女王陛下の対オカルト秘密組織<ランドリー>のIT担当兼諜報部員ボブ・ハワードは、のっけからヤバい仕事で愛用の携帯端末を壊してしまった。いろいろ大変だったしすこし休みを取りなさいと上司(どうやら今回はよい上司に恵まれたようだが、裏がないことを祈る)に言われて、昼からふらふら街をさまよっているうちに、以下引用のようなことに。

'Can I help you, sir?' beams one of the sales staff.

'That thing.' My finger points at the Jesus Phone as if drawn to it by powerful geas.'How much?'(That's the only question that matters, you see: I've already memorized its specifications.)

geasとは「ギアス」や「ゲアス」と訳される制約の呪いのことだ(作中でもときどき出てくる)。催眠にかかったようになっている間にことが終って、レシートを渡されて紙袋を下げて店を出たところではっと気づく、というのは万国共通の現象らしい。

Jesus Phoneというのがぴんとこなかったのだが、「Jobsのカルトに加わりたいわけじゃないけど、やっぱりほしいなあ」というcomputer geekであるBobの述懐を読み進めていくうちに卒然と悟った。iPhoneのあだ名なのだ。自分も使っているくせに、そんな御大層なニックネームがついているなんてぜんぜん知らなかった。やー、持ってるだけでぜんぜんまともに使ってないからな…

このあと帰宅したBobは、まずJailbreak作業をやっている。iPhoneiPadに搭載されたOSに「脱獄」とか「JB」とか呼ばれるこの処理をかけると、Apple社未認可の非公式アプリが使えるようになるのだそうだ。BobがPDAを何に使っているかを考えると、「脱獄」作業は必須なのだろう。彼がデスクワークを離れてエージェントとして活躍する際の命綱として、怪しげな対オカルト戦アプリをたくさん仕込まなければならないのだから(笑