雨の新宿交差点。
用事があって探し出してきたUSBに、過去10年間の日記が保存されていた。
2003年06月17日(火)のウェブ日記を以下に再録する。当時は新宿で働いていて、近所の会社にいた友達と、週に一回ランチに行っていた。そのときの話だ。
今日のランチは、新宿四丁目の交差点を見下ろす店にて。
G骨女史と肩を並べて、外を見ながら食べていると、伊勢丹前に挙動不審の青年を発見。歩道の段差から二十センチほど離れた車道の端に、透明ビニル傘を差して佇んでいる。あぶない。車にひっかけられそうだ。接触しそうになったバスやタクシーが彼の横で停まる。
しかし、彼はそこから離れない。
あのひと、なんか変ですよ、というG骨女史に、コンタクトを探しているのでは? と応えた。
いや、本当にそんなふうに見えたのだ。白いシャツをはおって、ジーンズをはいて。服装はべつにフツー。雨で濡れたアスファルトの上にかがみこんで目をこらしている。と思ったら。
彼は、人目を盗んですばやく路面にキスした。
見守っていたわれわれの目が仲良く飛び出したことはいうまでもない。
こんなところで目をらんらんと光らせている人間がいるとも知らない青年は、信号待ちの通行人が溜まってくると、歩道に上がってうろうろ。
信号が青に変わり、ひとがさっといなくなると、また当該の場所に降りて、かがみこんですばやくキス。五回済ませたあたりで一度その問題の場所を離れて、東京三菱銀行のほうへと横断歩道を半分渡って、またとってかえして、うろうろ。で、キス。
結局、合計七回くらいはやらかしていただろうか。
通りかかった(?)らしい友達と話をして、携帯でいずこかに連絡したのち、青年は新宿駅方面に去っていった。
なんだったんだろう。
新手の受験祈願かもしれませんねぇ、といったのはG骨女史である。
うん。たしかにそんな若さだけれど…。
解せないものを見た。ビョーキにならないでね、青年(汗
脚色一切なし。
彼がいったい何のためにこんなことをしていたのかは、とうぜん今も謎のままだ。