埋葬虫と朝食を。

思いがけなく床板を踏み抜いて罠にはまったCSIのカテゴリはつくったのに、虫のカテゴリをちっとも使っていないのに気づいた。すこし書いてみる。

今日DVDで観た『CSI:2』第5話「Scuba Doobie-Doo」は、グリッソムの虫オタクぶりがわかる回でもあった。捜査明けに朝食を取りに行く部下たちの誘いを断った彼が手にしているのは、事件解決の糸口をつくってくれたシデムシ(漢字では埋葬虫)の入った瓶である。フォークをにぎり、自分の食事を虫に分けてやるグリッソム。趣味と仕事が結びついていて、さらにそれを周囲に認められている彼は、とても幸せな虫オタクだ。

一般的に、虫がどれくらい好きかとかどんなふうに好きかとかを説明しても理解を得られることは少ない。そういう表明をきくだけで気持ち悪いと思うひともいる。「もういいおとななのに虫が好き? ありえない」。そういう反応が普通だ。だからふだんは、こちらの方面に関する自分の嗜好は口に出さない。虫が好きな人間はみなそういう変人扱いに慣れている。かれらが一様にシャイで、秘密主義ともいえる態度を見せるのは、ゆえのないことではない。口を開けば自ら「虫が好きなんて、気持ち悪いと思うでしょう?」である。自虐的過ぎて痛々しい。よって、グリッソムのように「誰がなんといおうとわが道を行く」タイプの虫屋は、大変レアといえる。

小学生のときに志したとおり、昆虫の研究者になればよかった、といまでも思うことがある。日本ではいまのところ法医昆虫学は学問として認められてはいない。もし自分が小さい頃から、そちら方面の選択肢があったら―――。人生の選択なら数え切れないほど誤ったが、最大の分岐点は、そこだったのかもしれない(笑)