虫屋の祭典。

数年ぶりにインセクトフェアに出かけた。

毎年秋分の日に東京・大手町のサンケイプラザで開催されるこの昆虫標本即売会は、規模としては世界最大の部類に入るという。撮影は許されていないので会場写真をここに載せることは叶わないが、海外の同種のフェアの様子も似たようなものなので、こちらを見ると雰囲気がつかめるだろう。出品されている商品はすべて虫とそれに関連するもの。どっちを向いても虫、虫、虫、虫屋の山。とにかく売り手も買い手も虫しか眼中にない。虫嫌いには阿鼻叫喚のホラーハウスといってもいいすぎではないだろう(笑

同行者は、虫は捕らないけれど見るのが好きな友人K庵さん(そもそもこのフェアの存在を教えてくれたのは彼女だった)と、そして本読み娘たちの漫画ブログで知られる虫仲間のCOCOさん。

東京駅ダンジョンで迷わぬように新幹線のホームで待ち合わせをして、顔合わせのご挨拶もそこそこに徒歩で当該ビルへ。人も車も極端に少ない休日の帝都オフィス街を抜けて、10時ちょうどにはフェア会場に入ることができた。

ネタがネタだけに、参加者の98%ほどは男性である。テーブルの上に隙間なく並べられて硝子蓋が取られた標本箱の中には、美しい蝶や蛾、巨大な甲虫の類からセミ、トンボ、バッタ、果てはゴキブリの類まで並んでいる。一部の舶来超珍品を除けば、どれも買えない値段ではないから恐ろしいww

手馴れた買い手はみな、自分用の小さな箱を抱えている。彼らが標本の上に身を乗り出して、目当ての虫を縫い止めた針の頭を摘んで持ち上げ、翅の表裏やら脚の展足の具合やら品定めを始めたら、今度は売り手側がテーブルの向こうから身を乗り出してくる。二言三言、その標本の産地や状態について会話を交わした後でそれが気に入れば、買い手は金を払い、小脇に抱えていた箱の蓋を開けて、クッションシートが張られた箱の底に虫を貫く針をぐっと刺す。そうやって美しい虫たちは愛好家のところにもらわれていくのだ。

生き虫や食草、蛹を売っている区画もある。まるまると小さなセンチコガネ数頭をプラケースに入れて売っているところでは、つい長々と見入ってしまった。「奈良方面で朝採りだよ」と、売り手の殿方は笑って教えてくれた。艶のある銅色や緑に輝くこの虫の主食は動物の落し物なので、どうやってここらへんでは飼うんですかとおそるおそる聞いたところ、甲虫用ゼリーでよいのだという。目からウロコだった(笑)*1

さて、最近すっかり蜂を専門に追う蜂屋になりつつあるCOCOさん、蜂の仲間の標本が売られているのを見つけたら、もうたまらなくなった模様。ぱっと姿が見えなくなったと思ったら、会場の隅で売っているお持ち帰り用の桐の小箱を買いに行っていたのだったw

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精悍な蜂の標本に、そうっとさわらせていただいた。蜂の身体を覆う毛は、写真であこがれていたとおりのもふもふ感。スズメバチには、生きているあいだはぜったいさわれないので、得がたい体験となった

会場全体を回っても、蜂の標本を出しているところはものすごく少なかった。来年か、その次の年になったら、すっかり蜂に詳しくなったCOCOさんがテーブルの向こう側に座って蜂標本専門の店を開いてるかも。お手伝いしますよw

会場から離脱したあとは東京駅近くまで戻って、新丸ビルでお昼ごはんを食べ、皇居まで歩いて茶をしばきながらまったり歓談。

COCOさん、はるばるおつかれさまでした。おみやげありがとうございました。術後ということですこし心配していたのですがお元気そうで良かったです。虫捕りのときはマムシスズメバチにどうかお気をつけて!

*1:卵を生ませたければ本来の食べ物である牛の落し物を与えるのだという。なるほど